飾らないワタシの地味日記

道端に捨てられた詩を拾います。(20)

2021-12-08から1日間の記事一覧

ねむい

人を愛したり、愛さなかったりして、僕はいくつもの季節をゴミ箱に放り投げた。ゴミ箱からは、くしゃくしゃに丸められた桜の呻き声が聞こえる。海水の腐った臭いがする。萎びれた皮カバンのような色になった雪が、溶けることもできずに春を待っている。僕は…

冷えていく

文字に対する圧倒的な信頼が世界に膜をかぶせているように思う。「文字」「圧倒的」「信頼」「世界」という単語を目にして、それぞれに抱くイメージを疑わぬままに受け入れてしまう。海に「うみ」という名前をつけて、愛おしい立ち振舞いを「かわいい」と形…

「美しい水死人」ガルシア=マルケス

風がうねりをあげているあいだは、男を追いかけてきた過去が遠くから運ばれてきて、女たちの与えた名前や彼に関する妄想に蝕まれないでいられる。しかし、風がやんでしまえば、男は過去から断絶され「エステバン」としてそこに横たわるしかない。「エステバ…