飾らないワタシの地味日記

道端に捨てられた詩を拾います。(20)

友人へ

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あなたがハタチを迎えて、わたしは、誰よりも熱烈に優しくおめでとうと言いたい。本当はあなたの目の前で、小さな花束を渡しながら「誕生日おめでとう」と言ってあげたかった(スターチスなんかはぴったりだね、花言葉もとても素敵だから)。けれどもわたしは、あなたの眠る時間に朝を迎えてしまうのだから、一緒に朝日を浴びながら背伸びすることも、朝食のトーストをわたしが焼いてあなたがスクランブルエッグを作ってくれるようなことも、そして、目の前であなたの12月24日を祝うなんてことも叶うことができない。それはとても悲しい、心や瞳や唇が凍ってしまうほどにつらい。でも、それでも、わたしたちが違う時間を、気温を、天気を生きているということは時として温かなココアのような優しさをわたしたちに与えてくれる。あなたがクッキーを焼いたことも、パスタを食べたことも、お風呂に入ったことも、引っ越しをしたことも、ぜんぶぜんぶ特別になる。あなたが、あなたのありのままを表現してくれるから、寂しいけれど寂しくないと思える。たとえ、時間が同じで、気温も天気も共有していたとしても、わたしたちのリレーションシップは決して変わらなかったろう。けれども、この距離が、たまに襲いくる寒さが、わたしたちを近づけて、このリレーションシップをより強固にしているんだとわたしは信じたい。見えなくても、触れることができなくても、愛が存在して今日も世界を照らしているみたいに、わたしたちの名前のつけ難い優しい関係も夕陽なり満月なりに形を変えてしっかりと存在している。わたしの伸ばした手を、掴んでくれたのがあなたでよかった。高校生はとてもつらい時間だったけれど、あなたがいてくれてよかった。今もこうして互いを鼓舞し慰め叱り合う相手が他の誰でもなくて、あなただということ、わたしはとても幸せに思う。生まれてきてくれて、ありがとうね。昨日も今日も明日も明後日も、ずっとずっと愛している。